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親が急変する・・・生きようとする力

Bさんは、物心ついた時から・・・言葉にできないほどの恐怖を感じていた。
ひと度、父の機嫌が悪くなったら・・・母はオロオロするばかり・・・兄と私は、何で叱られているのか分からないまま・・・自分が悪いから怒られている・・・と思って、親の言いなりになって・・・震えていた。
この恐怖は・・・体験した人でないと理解できないかもしれないが・・・楽しさが一瞬にして・・・恐怖になって・・・全てが凍りついてしまうのだ。
こうなったら、数日間は冷凍状態で過ごすしかない・・・
母は、夫が怖くて、何も言えないばかりか、子供達には過干渉・・・『お父さんを怒らせないように・・・』が口癖・・・どこにも子どもの味方になってくれる人はいなかった・・・
学校でも「いじめ」に遭っていたが・・・1人で抱えているしかなく・・・ついに人が怖くなって・・・外に出られなくなった。
Bさんは過酷な環境の中で10年以上苦しんだ・・・入院したこともある・・・
ある時・・・体の奥に岩のように硬い塊(感覚として)があることに気がついた。
はじめ、この塊が何なのか分からなかった・・・いつも胸の奥が苦しい・・・数年かかったが、塊は徐々に変化し始まった・・・
『家族のせいにして・・・被害者として生きるのは・・・もう嫌だ!・・・』『自分には自分の人生がある筈・・・』『この家族から離れたい・・・』と、胸の塊は言葉になっていった。
その言葉は、やがて具体的な行動となって現れてきた。
家族から離れたい気持ち・・・と、離れる怖さ・・・の板挟みにも苦しんだ・・・飴と鞭の恐怖からの脱出は・・・当事者でなければ分からない強烈なものだった・・・
紆余曲折を経て・・・何とか一人の空間を持つことができたことで・・・『これって・・・何か変だぞ・・・』『嫌だ!・・・』と言う自分のネガテイブな感覚が・・・はっきりと感じられるようになった・・・
自分は・・・何が嫌なのか・・・これがはっきり感じられれば、自分という人間の輪郭がはっきりと浮き彫りになって・・・嫌じゃないことが見つけやすくなった・・・
今でも共依存の誘惑で・・・気持ちがぐらつくこともあるが・・・最近・・・一人で居る空間の方が、自分らしくなれて落ち着く・・・と、ようやく思えるようになってきた。
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Bさんは物心ついた時から、かなり過酷な状況に身を置いていましたが、苦しさの中でも『何とかなる・・・』と、漠然とした想いがあったそうです。
私はBさんの内なる「生きようとする力」に感動しました。この力は理屈ではない・・・生まれながらに備わっているものだ・・・どんなに過酷な環境であろうが、消え失せない・・・汚されることもない・・・むしろ、厳しければ厳しいほど盤石になって行くもののようだ・・・と、お会いする度に感じておりました。
この「生きようとする力」は、Bさんだけのものではなく、生きとし生けるもの。私たち全てに宿っているものだ・・・と、思うのです。
安心の中で、自分の物語を語り、聴いてもらう対話の体験は、自分の事が冷静に観えてきて・・・否定されずに聴いてもらえることで・・・自分が大切にされている感が増し、気持ちが満たされてくる・・・そして、心のしこりが徐々に溶けてくる・・・
この対話の循環が「生きようとする力」の原動力になっていくのでしょう・・・
NHKの朝の連ドラ「風、薫る」で、赤痢で死の淵にいた母親が、息子が大声で呼びかける声を聴いたことで生還したシーンがありました。が、人間の根底には思考では計り知れない神秘の「生きようとする力」が宿っている・・・と信じております。
セラピスト 福田京子
