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自分を縛っている「思い込み」から自由になる
私たちは生きて行くために、都合の良い「思い込み」をたくさん持っています。
時にはそれが、自分を窮屈にしたり、相手まで縛ってしまうことも沢山あります。
思い込みは、無意識の中にしまわれており、その思い込みに沿って行動しておりますから、自分一人では、気づくことはできません。
他の人との代わりを通して、初めて「あれっ?何かが違う」「今まで〇〇だと思っていたけど、何が違うのだろう?」と、落ち込むことがあります。
とてもショッキングなことですが、これは心の構造として、誰にでも起きることで、実はこのショックが、自分を窮屈にしている「思い込み」に気づくチャンスになるのです。
以下は、ある方(A さん)のワークを通した心の軌跡です。
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Aさんは、夫から激しい「怒り」を向けられ、自分が至らないからこんなにも叱られるのだと、自分を責めて生きてきました。
ある時、娘さんのことがきっかけとなって、自分が心のセラピーを受けることになりました。
第一段階では。
夫の怒りは、自分が悪いからだと長いこと思っていたが、セラピーが進んでいくなかで、これは自分のせいではない。夫の怒りは、夫の心の問題であり、自分とは全く関係がないということが、はっきりと分かってきました。
ただ、夫の罵声があまりに恐ろしいので、自分の心が萎縮してしまって、とにかく、自分が謝って事を丸く収めようとしていたことに気がつきました。そしてワークが進むにつれて、夫と自分は別の人格を持った人間であって、感じ方は違っていて当然。自分だけが悪いなんてことはあり得ない。と、自我がしっかりと目覚め、成長してきました。
第二段階では。
Aさんは、「自分は、怒りを向けられる存在ではない」「もういい加減にしてくれ」という、今までとは違った、夫に対して「怒り」と「悲しさ」の感情が沸き起こってきました。
Aさんは、幼い頃から、怒りを人に向けたことはありませんでした。自分の心の中には、怒りはないと思っていたのです。穏やかな人間だと思っていたのです。
Aさんは幼い頃の自分を思い出しました。家族の中で、雲行きが悪くなると、自分には関係のないことまで引き受けて、何事もなかったようにその場を収めようとしていたのです。
この事実は、家の中の揉め事が怖いから、自分の怒りを、心の奥に押し込めて何事もないことにしていたことであり、自分を偽っていたのです。今まで通りこの偽りを続けていたら、偽りの人生しか歩めない。いつまでも、嘘の人生なんて嫌だ!
ある時から、思い切って、心の奥に押し込めていた「怒り」と向き合って、実際に「怒り」をトコトン感じてみようと決心をしました。
そして勇気を振り絞って、怖さを感じながら、相手に対して自分の気持ちを出すことも、試み始めました。
第三段階で。
ある時Aさんは、『私はずーっと、夫から心の傷を負わされている・・・』『悔しい気持ちでいっぱいだ・・・』『いくら訴えても届かない・・・』と、いつもよりトーンダウンした声で話し始めました。
『こんなこといつまで続けていくんだろう?』
(ここで長い長い沈黙があり、やがてゆっくりと語り出す)
『私は、ずっと被害を受けてきたことは事実だ』・・・『だからって、被害者意識の下で、安住しているのはおかしい気がする・・・』
『私は、今まで、夫が間違っている!』『そんな未熟な夫を相手にしている暇なはい!』『勝手に怒っていればいいでしょ!』と、怒りの気持ちを心の底に据えて、突き放したところから夫を見ていました。』
『でも本当は、相手を見下したり、軽蔑したり、相手より自分の方が優れていると思いたいわけじゃない!』『まして・・・相手を非難したいわけじゃない!・・・』『そんなこと望んでいない!』
『何より、はっきりと分かったことは、誰かに私の気持ちを分かってもらいたいわけじゃない!・・・』『誰かにわかってもらいたいなんて、依存じゃないか!』『いつまでも依存していたいわけじゃない!・・・』
『いつまでも、被害者意識に依存していたら、自分が分からなくなってしまう!』
『私には大切にしていることがある!』『それが今、はっきりと見えてきた!』
『私は、どういう人とでも平らな気持ちで、気持ち良く、楽しく、過ごしたい・・・穏やかに、共に暮らしたい!!・・・・という大事な願いを持っている!』
『困った時には、お互いに助けあったりしたいのだ・・・!!』『そういう関係になりたいと、生まれた時から・・・いや、そうなりたいと思って生まれてきたんだ・・・そんな気がしている』と、落ち着いた口調で力強く語りました。
そして、『私は今、大事なことを思い出すことができて、嬉しい!』
『夫と結婚したことを、自分の浅はかさだと思って、自分を責めていたけれど、これは違う!』
『彼と結婚したことで、彼の激しい「怒り」に出会ったことで、私は、私の一番大事にしていたことを、こんなにはっきりと思い出すことができた!』
『今まで私は、結婚への後悔という形で自分を否定していた』『その上、夫への非難と諦め(蔑視と否定)という二重の否定を我が身に背負わせていた!』『自分で自分を否定という紐で、がんじがらめに縛っていたんだ・・・』
第四段階では。
『今まで私は、相手を非難して、自分を正当化しようとしていた!』
『その事のために、エネルギーを全部使ってきた!・・・』
『もう、自分を正当化したくない!・・・』
『もう、意識の力で相手を悪者扱いにして、自分を高みに置く作業は疲れた!もう限界だ!・・・』『こんなことで疲れ果てるために、私は生きているんじゃない!』『馬鹿馬鹿しい!』
『もう、手放す!・・・』
『私には、幼い頃から大事にしている生き方がある!・・・』
『その方向に向かって行けばいいんだ!・・・』
『具体的に、何をすればいいのか、今はまだわからない・・・』
『でも、前のような不安が、嘘のように消えている』
『ベクトルがきちんと自分の方に向いている』『漠然と、いい感じがして
いる』
『これでいい』『やっと落ち着いた』
『自分が大事にしていることを大切にする生き方を、しよう・・・』
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最初の段階からAさんがここまで来るには、数年の歳月を要しております。
人間の心の奥には、自分の生き方にほとほと困り果てた時、こうして自分自身を、明るい救いの方向に推し進めてくれる“実に頼もしい「いのちの力」”が宿っているのです。
Aさんとのワークは、「頼もしい救いの力」が顕現してくるプロセスを、はっきりと見させてくれた、と思っています。
これからも、無意識の中の「いのち」が逞しく働き出すワークをして行きたいと思っています。
セラピスト 福田京子