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2020.11.01
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お能の会の初舞台

令和2年10月4日、横浜能楽堂の能舞台に初めて立たせていただきました。

 

私は3年ほど前から、本格的に謡曲のお稽古を始めました。10代から能に興味を持っておりましたので、実に60年ぶりに念願が叶ったわけです。師匠は、鎌倉能舞台のシテ方能楽師、中森健之介先生という若い素敵な先生です。

 

コロナが蔓延する前『今年は、鎌倉能舞台創立50周年に当たるので、その記念の会に出てみませんか』と、お話をいただきました。

 

出し物は、平家物語に由来する「経正」。当代随一の琵琶の名手である平家の若き公達、平経正は一の谷の合戦で破れ無念の死を遂げました。その菩提を弔うために、琵琶を仏前に手向け、管弦講という法事を行っているところへ、経正が幽霊となって姿を顕わしてくるという物語です。

 

仁和寺御室の僧都役を友人が、経正役を私が謡うことになり、平均年齢80歳という二人は、小学生のような純情さでそれはそれは熱心にお稽古に励みました。

 

いよいよ本番になった時『どうぞ、楽しんでください』と、師匠は笑顔で声をかけてくださいました。

 

能舞台の右手奥には、切戸という、茶室のにじり口のような小さな出入り口があります。そこを出た瞬間、目の前に観客席が広がりました。もう、ジタバタしても仕方ありません。深い呼吸を一つしてから、見台の前に座りました。やがて友人が落ち着いた調子で、おもむろに謡い始めました。

 

それを受け、私たちの後ろに居並ぶプロの先生方は、お腹に響き渡る素晴らしい地謡で、どんどん雰囲気を盛り上げ、いつしか管弦講が実際に行われているような雰囲気を醸し出してくださいました。

 

その中にあって私は、手向けの琵琶を抱きとって弾き始めている幽霊、経正の気持ちになっていきました。懐かしさと喜びがお腹の底の方から湧き上がってくるのを静かに感じておりました。

 

久しぶりに愛用の琵琶を無心に弾き興じているうちに、いつしか修羅道に戻らなくてはならない時刻となり、かき消すように暗闇に消えていくわけですが、詩歌管弦が大好きで、こよなく琵琶を愛してやまない経正の純粋な気持ちが切ないほど伝わってきました。

 

謡い終わって楽屋に戻ったとき、一瞬ではありましたが、雅な夢から覚めたような、いい香りが漂っているような心持ちになりました。

 

舞台というのは、自分の弱さが出てしまう非常に過酷な場であります。人目にさらしたくない未熟な部分や、克服できていない課題が、全部あからさまに出てしまいます。

 

今回私は、失敗をしないようにとか、無難にやり終えようという気持ちを一切捨てました。余計な気持ちをのせないで今の自分の弱さを全部さらけ出していこう!今の自分を隠さず表現していこう!と、素直な気持ちで臨みました。

 

余分なことを一切考えずに居ると、すごく清々しくて身体が軽い。すごく楽しい!楽しむということはこう言うことかと、目の前がパッと明るくなりました。

 

伸び伸びした、正直な気持ちで一心不乱にやればいい、それ以外のものは何もいらないのです。

 

そうだ!人生も同じことだ。

 

色々難しく考えないでいい。幼な子のようにシンプルに、無心になって思い切り楽しむことだよって、「経正」の幽霊から教えてもらったような初舞台でした。

 

セラピスト 福田京子

 

 

 

 

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