マインドフルネス・セラピー ぬくもり

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2023.03.21
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お手軽で安直な関係では味わえないものがある

 

私たちの日々は、ほとんどが、頭で考えたことを次々こなしているだけ。その上便利で手軽なことを優先して、面倒なことや気が重くなることがあるとすぐに遠ざけようとしてしまいます。

 

しかし、お手軽で安直な生き方だけで私たちは本当に幸せなのでしょうか?

 

目に見えているほとんどの仕事は目に見える形でやりとりができます。そこに曖昧さがあってはトラブルの元になりますから、排除しなければなりません。

 

しかし、生きている人間同士の心の関係は“曖昧さ”を排除してしまったら成り立たない世界です。曖昧だからこそそこに心を寄せ、どんな意味が隠れているのか読み解いていくことが必要なのです。

 

今ここで取り上げているのは、心の世界のことです。

 

人間関係は、言葉の表面のやりとりだけで終わってしまうと、その人の大事なメッセージを聞くチャンスを逸してしまうことが良くあります。

 

 

 

以下は実際の話です。

 

中学時代からの親しい友人がガンになり、いよいよ最後の入院を決意した折に『病院には来ないでね・・・』と言われたことがありました。

 

それからしばらく真剣に悩み、ついに勇気を出して病院を訪ね、ナースセンターで事情を話して本人が嫌だというなら帰ろうと思ってしばらく待っていました。すると、どうぞとベットに案内されました。

 

彼女は、笑顔で迎えてくれました。帰り際には来てくれて嬉しかった、、、と。この言葉は決してお世辞で言っているのではないと伝わって来ました。そして亡くなるまでの3ヶ月間は、週に2回通って彼女と色んな話をいっぱいしました。

 

彼女は子供の頃は貧しく、人には言えない悲しさや辛さを抱えながらも明るく振る舞い、成人してからはいくつもの仕事を掛け持ちしながら本当に見事な生き方をしていました。彼女は『人から、頑張りすぎだと言われるのが何より辛い。私が頑張らなければ、どうにもならなかったのよ』と、きっぱりと言い切った時の顔は凛としていました。いまでも忘れることはできません。

 

私は「はっ」と息を飲みました。

 

彼女は自分を犠牲にして働いたのではない。自分ができる精一杯のことを惜しみなく発揮して生きて来たのだ・・・という、毅然とした心の声が伝わって来ました。

 

共に手を取り合い『よく頑張って来たね・・・』『すごいね〜』『精一杯生きてきたんだね〜』と声をかけると、大粒の涙とこぼしながら『わかってもらえて嬉しい!』『私の人生は、これでいいの!』『惜しみなく働けた!』『悔いがない!!』『もうこれ以上はできないところまで、頑張ったよ〜私!!』『精一杯生きたよ〜』

 

もしもあの時、彼女の言葉の表面だけを受け取って亡くなるまで会うこともなく別れていたら、彼女の本当の気持ちを知らないまま私の勝手な思いだけで終わっていたでしょう。

 

この言動の下にはどんな想いがあるのだろう・・・何を伝えたいと思っているのだろう・・・と心を寄せていると、辛さの下にはじっと耐える「いのち」の力強さがあるし、深い悲しみの下には優しさがあるのが感じられてきます。

 

こういう瞬間に「出会えてよかった、、、」という喜びや死をも受け入れていく閑かさが感じられ、言いようのない感動に胸がいっぱいになります。そして人間同士の愛おしさに包まれる気がします。

 

勇気を出して一歩踏み出してこそ、表面的で、当たり障りのない関係、お手軽で安直なだけの付き合いではとうてい味わえない世界に出会えるのです。

 

人間の心の温かさに触れることができるのです。

 

 

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