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自動運転装置が以前より作動しなくなってきた
T君はいつも、どうしようかなと迷いの言葉から始まるのですが、じっと待っていると、今まで聞いたことがないようなことをボソボソと呟くのです。
『最近僕は、今まで使ったことのない筋肉を使うようにしているんです。そうすると自動運転装置が、作動しないと分かったんです』
彼の自動運転装置というのは、人と関わろうとすると、自分は嫌われている。自分なんかがここに居てはいけない。変なことを言っている。自分はダメだ・・・などという自分を否定する言葉がワーツと出てきて、たちまち身体が締め付けられ苦しくなって、身動きが取れなくなってしまうという深刻な状態のことです。
彼は、セラピーを通して自動運転装置のワケが分かってきました。自分が求めているのは、親や周囲の人に、怒りや恨みをぶつけて気持ちを晴らしたいのではないのです。自分らしく伸び伸びと自分の人生を生きていきたいと心底から思っているのです。しかし、さあ行動しようとするとたちまち自動運転が作動して、身動きができなくなり、本来の自分が巨大な自動装置に潰されているような状態になってしまう悩みでした。
ところが最近の彼は、自分の身体の声に耳を傾けることが、とても上手になりました。まだまだ怖さや、硬直症状は出てきますが、以前よりも格段に楽になってきたと言っています。このことは、苦しさを乗り越える身体の智慧が出てきて、頭とお腹が対等な関係性になってきたと言うことでしょう。
今まで使ったことのない筋肉を使うというのは、彼の「いのち」が教えてくれた彼にしかわからない感覚で、他の人が簡単に真似できるものではありません。
身体からの智慧は、その人の内面からフット湧き上がってくるものですから、これこそ本命です。外から取り入れた知識やテクニックが出てきているのではないのです。人間が人間らしく輝いていく大元のところ、可能性が宿っているところが開眼してきたのです。
この感覚を信じて生きれば、恐れや不安は実体のないものだと実感することができるでしょう。自分を信じるというのはこのお腹の感覚です。
T君はさらに『感覚として分かったことがあるんです!』『身体と対話するってことは、自分にとって都合の悪いこと、嫌なこと、蓋をしたいこと、無いことにしたいネガティブなところを排除しないことなんです!』『それって、身体で感じることなんですね!』と瞳を輝かせて付け加えてくれました。
この「いのち」からほとばしり出てくる言語は、一瞬にして側にいる私の心にも響き、共感が静かな喜びとなって、お互いの心を満たしてくれます。この豊かな循環は何とも言いようのない楽しさとなって、部屋全体に温かい空気となって満ちてくるのです。
T君からの感想が届いています。
自動運転・手動運転
使っていない筋肉や神経を使うことによって、“今”にとどまることができ、本当の意味で身体を使うことができる。自分の身体を感じることができる。そしてより全体的になれる感じがする。
自動運転だと、身体を本当には使わないで、出来てしまう。
動かしている身体の感覚を感じないままに出来てしまう。
自動運転だと、簡単すぎるゆえに意識をひとつに集中することができず、注意が散漫になってしまい「ながら行動」に陥りやすい。
手動運転だと意識をひとつに集中することができ(難しい使い方なので、他に意識がいかない)今ここだけに集中できる。
普段やっていることをあえてやりにくいやり方でやってみることにより、内側の筋肉が使え、かつ先へ急がずにここにとどまれる。
内側の筋肉を使えることで、器としての身体が大きくなる感じがする。
やりにくいやり方をして、普段使わないところを使うことで、自分の世界を確立できる。
自動運転というのは、支配されている状態であり、動かされている状態。手動運転に切り替えられれば、支配関係、主従関係から切り離されることができ、主体性を取り戻せる。
思い通りにできない難しい使い方というのは、不安定な状態を体験しつつ、それをなんとか安定させようと身体を使うこと(鍛えること)であり、その過程で、身体の安定感、心の安定感が強化されていくように感じる。
精神的な意味でも、不安定を安定に持っていく力が強化されていると実感しています。
セラピスト 福田京子